日本地球化学会会長 益田晴恵

 2017年11月1日、日本地球化学会は一般社団法人日本地球化学会として、再出発いたしました。組織変更に伴い、前任の圦本尚義前会長から、会長の役職を同日に引き継ぎました。微力ではありますが、本会のいっそうの発展のために尽力するつもりです。皆様のご支援とご協力をよろしくお願いいたします。

 日本地球化学会は1953年に地球化学研究会として、会員200名ほどで発足しました。1963年には日本地球化学会と名称を改めました。1966年にはGeochemical Journalを年4回、1967年には地球化学を年1回のペースで、発刊を始めました。Geochemical Journalは、地球惑星科学分野では、我が国で最初にSCI(サイテーションインデックスを与えられる)に登録された学術雑誌です。英文誌発刊に力を入れていた状況から、早い時期から学会の先輩たちが世界を相手に学術研究を牽引しようとしていた様子がうかがえます。「我が国における地球化学の進歩と発展を図る」ことが本会の目的ですが、世界に確たる地位を占めてこそ我が国の学術に貢献できることを認識していたのだと、今さらながらに先輩たちの「高い志」を感じることです。
 現在の会員数は900名を少し超えるところで推移しています。人口減少や研究機関での人員削減のために、多くの学術団体が会員数を減少させる中で、一定の会員数を保っていることは評価できるものです。これには、若手会員の割合が高いことが貢献しています。今期の役員には、30代の会員も複数おります。私は、原田尚美博士とともに、女性として、本会の歴史の中で最初の会長・副会長を務めることとなりました。女性の学会代表者は決して希有ではありませんが、二人同時の就任は国内では珍しいのではないでしょうか。このことは、本会に女性会員が多いことを反映しているものと言えます。本会は、ダイバーシティへの対応について、国内の学術団体の中では先導的立場にあると自負しています。学術研究ではもちろんのこと、学会での様々な取組に置いても、常に先端をいく学会でありたいものだと考えています。

 近年の学術を取り巻く状況から、本学会の可及的課題は3つありました。法人化、国際化、大型学術研究計画への取組みです。
 法人化は、本会が社会的に信頼を得るため、また、社会に貢献していることを表明するために不可欠でした。今回、法人化は果たしましたが、今後いっそう、「地球化学」の社会的認知度を高めるために活動を続ける必要があると考えています。これまで講師派遣による地球化学の普及活動を行ってきました。今後は、さらに一般普及書の発行なども学会から提案していきたいと考えています。
 国際化に関しては、2013年に、中国鉱物岩石地球化学会、Geochemical Society、European Association of Geochemistryと、2015年には韓国地質学会と学術交流協定を締結しました。締結後は、研究者の交流事業やゴールドシュミット会議の積極的支援等を通じて、共同事業に実績を上げつつあります。既に、多くの会員が、個人的に、また所属機関を通じて、様々な国際会議や国際共同研究等で活躍していらっしゃいます。それらの活動も考慮しながら、交流実績を持つ国の学術団体と連携関係を強化します。特に、アジアの研究者の牽引力となり、国際的にいっそうの信頼を得る努力を学会として続けます。また、このためには、Geochemical Journalの発進力をさらに強化する必要もあります。ぜひこの雑誌を利用して、研究成果を世界へ発信して下さい。
 大型学術研究に関しては、日本学術会議が進めている「マスタープラン」(http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/ogata/)と、それに基づいて作成される文部科学省による「夢ロードマップ」(http://www.mext.go.jp/a_menu/kyoten/1383666.htm)に関する課題が挙げられます。これらは、課題が採択されたからと言って全てがすぐに実現するわけではありません。しかし、採択されたプロジェクトはその後の科学技術政策を決定する要因となり、実現のために関連研究課題に科学研究費補助金などの大型研究予算が優先的に割り当てられるなど、分野全体への波及効果が期待されます。これまでに検討された課題はそれぞれ「マスタープラン2017」「夢ロードマップ2017」として報告書が提出されています。現在、日本学術会議の24期の活動でもこの課題の議論が始まっており、次回の提案書は24期が終了する2020年の発表が予定されています。地球化学分野は、従来、個別の事象を取り扱うことが多く、大型研究にそぐわない課題が多い傾向がありました。しかし、学会全体が発展するために、どのように対応すべきかを考え続ける必要があります。前期ではタスクフォースを設けて検討を続けてきましたが、今期も最優先の継続課題とします。

 さらに、会員と学会組織の研究を取り巻く環境を健全に保つための活動も進めていきたいと考えています。研究不正やその温床となるハラスメントなどに対して、凛とした姿勢で臨んでいきます。そのために、今後は研究者倫理に関する規約の制定やワークショップなどの活動も行うつもりです。

 日本地球化学会が実証的研究活動によって国内・国際の地球惑星科学分野を牽引し続けるために、会員の皆様と協力しながら、学会の活力をいっそう高めていきたいと考えています。今後とも、いっそうの協力とご支援を、重ねてお願いします。