▼ 賞雅朝子会員(学生正会員)の研究成果がChemical Geologyにて発表されています

W isotope compositions of oceanic islands basalts from French Polynesia and their meaning for core-mantle interaction
Asako Takamasa, Shun'ichi Nakai, YuVin Sahoo, Takeshi Hanyu, Yoshiyuki Tatsumi

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賞雅会員による内容紹介:
マントル循環のモデルに制約を加えるためにはプルームの発生深度を決定できる証拠を見つけることが重要である.コア-マントル境界では,コア-マントル相互作用と総称される化学反応や同位体交換などが生じているとされており,上昇するプルームから生じる火成岩に地球化学的な影響を与えると考えられている.

 Hf-W(ハフニウム-タングステン)系トレーサーは,コア形成時に親核種の182Hfが親石性元素であるためマントルへ,娘核種の182Wは親鉄性元素であるためコアに分配される.182W/184W同位体比はマントルよりもコアのほうが低くなることが予想され,上昇するプルーム中にコア物質が含まれれば,通常のマントルよりも低い同位体比(< 0ε)を持つと推測できる.

 この研究では,南ポリネシア諸島の玄武岩中のW同位体比を測定し,コア物質の影響を見積もった.この地域の火山岩試料を選択した理由は以下の2つである.1) この地域の火成活動の起源物質は,地震波トモグラフィーが示すコア−マントル境界からの上昇流と関係していると考えられる. 2)この地域の火山岩は,非常に放射壊変性の鉛同位体比をもち,堆積物の寄与が少ない事を示す.地球表層の堆積物はタングステン濃度が高いため微量でも混入するとコアの同位体の特徴を消してしまう可能性が高い.

 W同位体比測定については,グループ内で開発されたSahoo et al.(2006)をさらに改良し,より高精度の測定を行った.すべての試料で測定誤差を超えた異常値は観察されず,コア物質の明らかな寄与は認められなかった.測定誤差を含めてもコア物質の影響は0.6%未満であることがわかった.この結果からコア-マントル相互作用とマントル循環について3つの可能性が提唱できる.

  1. 測定結果はこれらの起源物質がコア付近まで下降しておらず,コア-マントル相互作用を受けていないか,0.6%程度のコア物質の影響しか受けていない可能性を示す.
  2. Humayun et al.(2004)が指摘しているように,コア-マントル相互作用はW同位体比を変化させない可能性がある.この場合,W同位体比とOs同位体比およびFe/Mnなどのコア-マントル相互作用の証拠は,必ずしも一致しなくてよい.
  3. これらの起源物質はコア-マントル相互作用を受けたが,上昇する過程で周辺のマントル物質と混合し,W同位体比の負の異常が希釈され,検出できなくなってしまった可能性がある.しかし,この可能性はPb同位体比やW濃度などからほぼない.