■東京工業大学大学院理工学研究科 地球惑星科学専攻平田研究室

入澤 啓太

【研究室概要】
 私は現在、東京工業大学大学院理工学研究科の博士課程後期1年に在籍しています。今回は、私が所属する地球惑星科学専攻平田研究室の紹介を担当させて頂きます。平田研究室には、研究生1名、大学院生7名、学部生3名(2006年1月現在)が在籍しています。平田研究室では、同位体地球化学的手法を応用し、惑星形成、地殻成長、地球表層環境変遷、生体内金属代謝と同位体分別などの幅広い研究課題に取り組んでいます。また、農産物の産地判別などといった社会的ニーズの高い分析も行っています。
 平田研究室には、多重検出器型ICP質量分析計(MC-ICPMS)、四重極ICP質量分析計(ICP-QMS)、193nm エキシマレーザーを用いたレーザーアブレーションシステムが設置されています(図1)。共同研究も盛んに行われており、専攻内はもちろんのこと、学外の方々も使用に訪れます。装置は頻繁に使用されており、ICP質量分析計に用いるアルゴンガス使用量は東京都内で一番だそうです。全ての分析機器の管理や整備は、平田先生と学生とでおこないます。特にメンテナンスは、時間も体力も必要な大変な作業ですが、その代わり、2年間ほど在籍していればICP質量分析計やハードウエアについてはかなり高度な知識と技術が身に付きます。
 現在、学術雑誌などで発表される研究成果としては、レーザーアブレーション法とICP質量分析計を組み合わせた固体地球化学試料の局所同位体分析が多くを占めています。これは、試料の前処理の簡便さと分析の迅速性のためです。これに対し学生の多くは、まず湿式分析を多用した化学操作の練習から始まります(図2)。試料を酸処理し、溶媒抽出法やイオン交換法を用いて目的元素を回収したのちICP質量分析計で分析するという、基礎的な化学操作の習得が最初の目的となります。各自が取り扱う湿式分析法は、新たに立ち上げる段階から始めることがほとんどで、各自で試行錯誤しながら研究を進めています。
 昨年、先生と学生全員で協力し、新しいクリーンルームを立ち上げました(図3)。これにより、湿式分析からも研究成果を出そうという意識が高まっています。我々学生は主にCa, Fe, Sr, Ce, Nd, W, Reなどの安定同位体地球化学への応用といった研究に取り組んでおり、近い将来、レーザーアブレーション-ICPMS法に勝る成果を出そうと日夜研究活動に取り組んでいます。
 セミナーは週に一回行われ、これまでの研究の成果や進捗状態、問題点などを各自が発表します。対象とするテーマが広いため、多岐に渡る研究分野の発表を聞くことができ、視野を広げることができます。また、毎年5月に学内・学外の方々を集めて、学生が主催し、また講師を務める「ICP質量分析計セミナー」を開いております。この講習会の参加が、基本的には平田研のICP-MS装置を利用する条件となります。また、装置のメンテナンスを含めた大掃除は年2回行っています。他に、学生で自主的に論文セミナー、基礎地球化学セミナー、さらには実験操作の習得を目的とした基礎化学実験セミナーなどを立ち上げています。東工大地惑では、他の研究室のセミナーに参加することや、専攻全体の学生が企画・運営している「地惑セミナー」などを通じて他大学の先生方々の発表を聞くこともでき、知的刺激にあふれている環境です。

 深夜や土日も研究室には誰かがいるような環境なので、互いに切磋琢磨しながら研究を行っています。近くに寄ることがありましたら、気軽に遊びに来て下さい(図4)。

主な年間行事
5月ICP質量分析計セミナー
7月メンテナンス&大掃除
9月地球化学会
11月質量分析学会同位体比部会
12月メンテナンス&大掃除・博士論文発表会
2月修士・学士論文発表会
3月教室発表会(外部評価)