■北海道大学大学院理学院 自然史科学専攻 角皆・中川研究室

亀山 宗彦

 地球化学をこよなく愛する皆様、いかがお過ごしでしょうか。今回で2回目となります本年度からの新企画「院生による研究室紹介」の執筆依頼を受けました、北海道大学大学院理学院自然史科学専攻博士後期課程3年の亀山宗彦です。僭越ではありますが、私が所属しております角皆・中川研究室についてご紹介致します。

 角皆・中川研はその名の通り、助教授の角皆潤(つのがいうるむ)先生と助手の中川書子(なかがわふみこ)先生の2名の教員、そのもとで日々研究に精を出している研究員4名、大学院生8名、留学生1名そして秘書さん1名の計16名(2006年4月現在)で構成されている研究集団です。まず我らが研究室の特徴として「若い」ということがあげられます。最年長(秘書さんは年齢不詳のため除く)の角皆先生でも30代。そのベビーフェイスもあいまって数年前までは大学院生に間違われていたこともあるとかないとか。話はそれてしまいましたが、何が言いたいかと言いますと角皆・中川研は「若く非常に活気のある研究室」であるということであります。研究室としても発足してまだ6年。研究の方向性も日々の活発な議論の中から生まれるような発展途上の研究室であり、毎年新しいことに挑戦しています。
 さて、現在どのような研究をおこなっているのかということについて簡単に紹介します。先に述べました通り日々さまざまな新たな分野に挑戦しているのですが、角皆・中川研の一番の特徴として挙げられることは連続フロー型の質量分析計を用い、微量の試料で安定同位体比分析をおこなうことが出来る(出来なければ出来るようにする)ということです。高精度の同位体データは物質の生成・消滅過程を知る指標として大変有用です。角皆・中川研ではこれまで主に大気中・海水中の微量気体成分(メタン、亜酸化窒素、一酸化炭素、非メタン炭化水素、ハロカーボン等)の同位体定量システムを開発してきましたが、最近では二酸化炭素の三酸素同位体組成、微量炭酸塩の炭素・酸素同位体組成、さらに硝酸の窒素・三酸素同位体組成の各測定システム等も構築しました。
 微量成分の測定には、質量分析計に導入する前に試料から測定したい成分を抽出・精製・分離しなければなりませんが、その作業をおこなう経路(これを通常「ライン」と呼んでおります)は自分たちで作成します。角皆・中川研に所属する学生のほとんどは、日々増えてゆくライン作りに参加しており、分析法の開発を通じていつの間にか微量気体分析のノウハウが身につくようになります(図1、図2)。
 では、どのようなテーマを対象に微量成分の安定同位体組成を武器として研究をおこなっているか具体的に例を挙げると、大気-海洋-陸域における各種微量気体分子の起源や挙動に関する研究、海洋フロンティア領域(深海底の熱水系やメタン湧出系、泥火山など)の開拓研究、海底下における始源的微生物活動に関する研究、海底堆積物やアイスコアなどを用いた過去の地球環境の復元に関する研究、など多岐に渡っています。またこれらの研究をおこなうために必要な試料は極力自分たちの手で採取することを心がけていて、毎年いくつもの研究航海などに参加して揺れる船の上で必死に試料を採取しています(図3)。また、試料採取装置も目的にあわせて開発しており、深海採水調査船で使用する保圧型海底湧水採取装置「WHATS:Water and Hydrothermal-fluid Atsuryoku Tight Sampler」は特許も取得しています。
 長々と綴ってきましたが、よく「百聞は一見にしかず」といいます。何かのご用事で恋の街札幌にお越しの際は(角皆・中川研に行くという用事を作っていただくのもよろしいかと)是非覗きにいらしてください(図4)。他大学からの学生さんにも広く門戸を開いていますので(実は私も他大学から来たのですが)お気軽にお越しください。また、毎年地球化学会の年会には研究室を挙げて参加しています。懇親会で妙に食事にへばりついている集団がいましたら、高確率で角皆・中川研の学生です。怖がらずにお声をかけていただけると幸いです。興味はあるけど声をかけるのはちょっと怖いという方は研究室のHP(http://marchem.ep.sci.hokudai.ac.jp/index.html)もありますので、是非ご覧ください。

 以上、簡単ではありますが角皆・中川研の紹介でした。乱文失礼いたしました。