インド洋の海底,三つの中央海嶺が交わるロドリゲス三重点近傍の熱水活動域「かいれいフィールド」については,熱水活動の兆候の捕捉,入念な探査,そして発見に至るすべての過程で,無機化学分野が関わっています。この「かいれいフィールド」調査に関する話は,蒲生教授のweb site に「海底温泉発見の瞬間」というコラムとして,当時の様子や活躍した人物,使用した機器などが詳細に書かれていますので,ぜひご一読ください。また,2006年12月に行われた白鳳丸のインド洋航海(KH―06―4)では,新たに二つの熱水活動の兆候を捕捉しました。このうちの一つは,これまでにない化学的特徴を示しており,今後の潜航調査による熱水噴出口の発見が楽しみです。
先に「無機物質」と書きましたが,対象は非常に多岐にわたります。現在分析しているものだけでも,酸素や水素といった気体分子,鉄やアルミニウムといった金属元素,希土類元素などがあり,さらにこれらの安定同位体組成や放射性同位体組成についても分析を行っています。使用する分析機器はICP-MS(PMS2000・HP 4500),TIMS ( MAT 262), CF-IRMS(DELTA PLUS XP),CSV,ガスクロマトグラフィー(島津GC14B,ヤナコTRD―1),a線カウンターなど,多種多彩です。これらの機器を用いた新たな分析法を開発し,測定したい元素があれば測定できるようにする,このことは私が研究室に入って一番驚いたことです。