■海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域地球内部ダイナミクス基盤研究プログラム
 地球深部と表層との共進化研究チーム


野崎達生

 今回は,独立行政法人海洋研究開発機構・地球内部ダイナミクス領域・地球内部ダイナミクス基盤研究プログラム・地球深部と表層との共進化研究チームの紹介です。2009年4月の組織改編により,さらに長~いチーム名となりました。なかなか覚えられないと思いますので,JAMSTEC/IFREE2C とご記憶下されば幸いです。
 IFREE2C は,鈴木勝彦チームリーダーを中心に研究員3名,技術研究員1名,ポストドクトラル研究員1名,他職員3名,スタッフアシスタント2名の11名で構成されています(図1:2009年12月現在)。他に,外来研究員5名,研究生5名が在籍しており,多くの方々との共同研究を行っているオープンなチームです。チームの雰囲気は,30代を中心とした若い職員が多いことから遠慮なくざっくばらんに意見を言い合うことができ,日々活発に議論を行っています。また,それぞれの専門が地球化学だけではなく岩石学,堆積学,鉱床学など多岐にわたっており,悪く言えばバラバラですが,良く言えば「1+1」が3にも4にもなるのが特徴です。
 本チームで行っている研究をいくつか紹介しますと,同位体比組成変動から海洋無酸素事変(OAE)などのグローバルイベントとマントル活動とのリンケージを探る,巨大火成岩岩石区(LIPs)から大気―海洋系に供給された物質量の見積りをメルト包有物分析などから直接行いグローバルイベントに関わったのかどうかを検証する,島弧火成岩の同位体比組成から沈み込み帯における物質循環を解明するなどが挙げられます。これらの研究を行うためには,濃い元素から極めて薄い元素まで,多量の試料から極微量の試料まで測定を行う分析技術・機器が求められます。
 現在,我々のチームが主に管理している分析機器には,負イオン表面電離型質量分析装置(図2),希ガス質量分析装置(図3),誘導結合プラズマ質量分析装置などがあります。また,IFREE には原子吸光分析装置,蛍光X 線分析装置,電子線マイクロアナライザー,マルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析装置など多種多様な分析機器があり,他チームの方と共同で作業を行えば様々な分析を行うことができます。
 最近の主な研究成果を2つ紹介しますと,黒色泥岩のRe-Os 同位体比組成を用いてオントンジャワ海台の噴出と白亜紀最大の海洋無酸素事変(OAE―1a)が同時に起こっていることを初めて明らかにしました。また,西オーストラリアのボーリングコアから採取されたArchean の赤鉄鉱を切る黄鉄鉱脈の生成年代をRe-Os 放射壊変系を利用して求め,地球上の酸素の発生時期が通説よりも3億年以上古くなることを明らかにしました。このように,極微量元素の同位体比組成測定技術を武器にグローバルな地球環境・物質循環に関わる研究を行っています(図4,5)。
 日常生活ではミーティングを毎週1回行い,2つの隔週のセミナーに参加しています。ミーティングは,会議の報告や各人のスケジュール確認,実験室の作業予約などが主ですが,いつの間にか誰かの研究について長々と議論をしていたり,世間話が盛り上がって気が付くとお昼になっていたりすることもあります。ミーティングの後には,大事な大事な実験室の清掃を皆で入念に行います。セミナーでは,色々な分野の方々から最先端の話を聞くことができるので,大変勉強になります。また,片方のセミナーは原則発表・質疑応答ともに英語で行われるため,英語の良いトレーニングにもなります。
 さて真面目な話題が少し多過ぎたかもしれませんが,JAMSTEC では多数の研究船が運航されているので職場の目と鼻の先が"海"です。しかも,研究船が入港できるように浚渫してあるので,結構な水深があります。ということは……,JAMSTEC の岸壁は絶好の釣りポイントなのです!(図6)。夏には,ヘチ釣りでメジナ・カサゴ・クロダイ・カワハギ,投げ釣りでは,キス・ハゼ,ルアー釣りでスズキ,サビキ釣りではアジ・イワシなどが釣れます。冬にはアイナメ・メバル・カレイ・ウミタナゴなども釣れます。したがって,研究環境が充実しているのはもちろんですが,筆者のような釣り好き・海好きにはたまらない職場環境です。また,横須賀という立地上,たくさんの往来する船や軍艦を毎日眺めることができ,船好きにもたまらない職場でしょう。本当は釣りの話を延々と続けたいところなのですが,キリがなくなりそうなのでこの辺で。

 JAMSTEC には一般の方に公開されている見学施設がありますし,旅行雑誌"るるぶ"にも観光スポットとして紹介されているくらいですから,近くにお越しの際には是非お立ち寄り下さい。また,我々のチームに興味を持たれた方は,JAMSTEC/IFREE のHP(http://www.jamstec.go.jp/ifree/)をご覧になって頂ければ幸いです。