温室効果とは?地球の温暖化とは?
物体は、その温度によって決まる波長の電磁波を出しています。そして、その電磁波の波長は、温度が高いほど短くなります。6000℃の太陽からは主に可視光線が放射され、平均15℃の地表からは赤外線が放射されます。可視光線は無色の気体には吸収されません。しかし、赤外線は、窒素や酸素のような等核2原子分子には吸収されませんが、水蒸気、二酸化炭素、メタンのような異核2原子分子や3原子以上の気体分子には吸収されます。大気中に存在するこの赤外線を吸収する気体を温室効果気体と言っています。
さて、地球にやってきた太陽からの電磁波、主に可視光線は、約半分が雲による反射、空気分子などによる吸収、散乱によって失われますが、残り半分が地表に届き、地表を暖めます。地表からはその熱が主に赤外線となって大気に戻ります。その赤外線を大気中の温室効果気体が吸収して大気を暖めます。暖まった大気は赤外線を四方八方に放射しますから、その一部はまた地表に戻ります。この繰り返しで地表はさらに暖まります。最終的な地表の温度は、地表が受けたすべてのエネルギーを赤外線として放出する温度で、大気中の温室効果気体の濃度が高いほど、そのエネルギーが多くなり、地表の温度は高くなります。その温度上昇分を温室効果と言っています。上空に温室のガラスのようなものがあるわけではありません。
なお、地表からは、赤外線放出の他、水を蒸発させたり、空気を直接暖めたりして失われるエネルギーもあります。これらを数字で表してみます。地球が受ける太陽放射を100(全地球平均で342 W/m
2
となる)とすると、地表が直接受ける太陽光は49ですが、地表からは、114が赤外線放射、 26が潜熱(蒸発)、5が顕熱(伝導)で失われ、計145が放出されます。この差の96が温室効果分です。これによる地表温度の上昇は平均33℃に達します。すなわち、地表温度は、温室効果気体が現在の濃度で15℃、まったくなければ零下18℃になります。
また、地表から放出される赤外線は連続スペクトルですが、これら温室効果気体が吸収できない赤外線の波長領域(地球放射の窓)があります。放射と吸収を繰り返しながら高空に達しますと、だんだんこの吸収できない波長領域の赤外線の割合が増えます。さらに、その割合は、温室効果気体の濃度が増すとともに増えます。赤外線を吸収し、放射しなければ周辺の気体の温度は上がりません。また、地球が受け取るエネルギーと地球から放出するエネルギーは同じです。その結果、成層圏では、温室効果気体の濃度が増すと逆に気温が下がります。それで、成層圏の温度降下が温室効果増大を知る手段にもなっています。なお、オゾンは太陽からの紫外線を吸収して成層圏を暖めますので、その濃度変動にも注意する必要はあります。
いずれにせよ、温室という言葉が一人歩きし、この赤外線放射吸収効果に誤った印象を与えています。正しく理解したいものです。
(角皆静男)