温室効果気体(二酸化炭素など)の大気中濃度が増えて問題となっていますが、
他の気体の濃度は一定なのですか?それはなぜ?
地球の大気の99.9%は窒素(78%)、酸素(21%)、アルゴン(0.93%)で占められていて、これらの濃度は高度約100kmまでは地球上のどこへ行っても一定です。残りの0.1%が微量気体と呼ばれ、水蒸気、二酸化炭素などの温室効果気体、フロンなどのオゾン層破壊物質、窒素酸化物などの大気汚染物質などが含まれますが、微量気体の濃度は時間的・空間的に一定とは限りません。
これら気体成分の濃度は生成速度と消滅速度のバランス、および大気中の存在量に対して生成・消滅量がどれほどの割合か、で決まっています。たとえば、窒素は土や水の中に存在する微生物の作用で生成(脱窒)、消滅(窒素固定)し、酸素は植物による光合成で生成、生物の呼吸で消滅しますが、これらのバランスはほぼ取れています。また、大気中の窒素・酸素の総量は年間の生成量(または消滅量)のそれぞれ2000万倍、2200倍もある(総量が完全に入れ替わるのに平均で2000万年、2200年かかることになり、これを平均寿命と呼びます)ため、よく混合された大気中では時間的空間的な変化がみられない、ということになります。
一方、微量気体については、生成と消滅のバランスがとれていなかったり、平均寿命が短かったりするために、時間や場所によって濃度が変動する場合がよくあります。例えば二酸化炭素は生物の呼吸・光合成による生成・消滅や、海洋による吸収・放出がほぼ釣り合っていたものが、人間による化石燃料の燃焼で生成量が増えてバランスが崩れた結果、現在濃度が急速に増加していると考えられています。また二酸化炭素の平均寿命は約4年と短いので、季節による変動や、陸上と海上、北半球(先進工業国が多く存在する)と南半球で濃度に違いがあることがわかっています。一方、オゾン層保護のため生産が全廃されたフロン(クロロフルオロカーボン)の場合は、消滅(成層圏での紫外光分解)のみ起こるようになり、増加し続けていた濃度が減少に転じています。
ただ、窒素や酸素の濃度は地球の誕生当初から一定だったわけではなく、地質学的・生物学的な進化の過程で変化してきたと考えられています。二酸化炭素の濃度も人間の現れるはるか前、氷期・間氷期のサイクルに伴って大きく変化したことが知られています。また近年分析技術が進んだ結果、大気中の酸素濃度が二酸化炭素濃度の増加に呼応して減少していることが確かめられました。大気主成分や微量成分の濃度がどのように変化してきたのか、将来どのように変化するのかについては、まだわからないことも多く残されているのです。
(豊田 栄)