▼ Fe-oxide concretions formed by interacting carbonate and acidic waters on Earth and Mars
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地球と火星の球状鉄コンクリーションの成因と太古の火星環境の謎を解明!
吉田英一(名古屋大学博物館)*・長谷川精(高知大学理工学部)*・勝田長貴(岐阜大学教育学部)・丸山一平・城野信一・浅原良浩・山口靖(名古屋大学大学院環境学研究科)・南雅代(名古屋大学宇宙地球環境研究所)・西本昌司(名古屋市科学館)・ニーデン イチノロフ(モンゴル古生物地質研究所)・リチャード メトカーフ(英国地質調査所)
【研究内容】
吉田英一会員,長谷川精会員,南雅代会員,浅原良浩会員らのグループは,2004年にNASAの火星探査ローバーOpportunityによってメリディアニ平原で発見された鉄小球(ブルーベリーとも呼ばれる)の成因を,アナロジーとなる米国ユタ州とモンゴルの球状鉄コンクリーションの研究により解明しました(図1)。ユタ州とモンゴルの調査から,球状鉄コンクリーションの先駆物質は炭酸カルシウム(CaCO3)の球状コンクリーションであり,地層中に浸透した酸性流体との中和反応によって,鉄コンクリーションに置き換わったことが明らかとなったのです。さらに,同様のメカニズムで火星の鉄小球(ブルーベリー)の成因も説明でき,その先駆物質も炭酸塩コンクリーションである可能性が高いことを示しました。この成果は,太古(40億年前頃)には厚い二酸化炭素の大気が存在し,温暖湿潤な環境だった火星の表層に,何故か炭酸塩岩がほとんど見られないという,従来の謎の解明に繋がる初めての地質証拠と言えます。
メリディアニ平原のブルーベリーと同様に,球状の形態を示すノジュールが火星の他の場所からも見つかっており,ブルーベリーと同様に,もともとは炭酸塩コンクリーションだった可能性があります。このように火星表層には,初生的には炭酸塩コンクリーションだったものが置換したものが幾つか見られます。地球上で形成される炭酸塩コンクリーションの多くは,生物遺骸の有機炭素を起源として急速に形成されたことが我々の先行研究で明らかになっており,炭素同位体比などから生物起源か非生物起源かの認定が可能です。もしそのような元素置換が起こっていない,初生的な炭酸塩が保存されている火星の地層を調査・サンプルリターンすることが出来れば,炭酸塩が形成された時の太古の火星環境や生命痕跡の有無などの解明に繋がるかもしれません。
最近NASAのMars2020の着陸地として選ばれたJezero craterは,まさに炭酸塩が酸性流体によって溶解せずに残有している可能性が高い地域に当たります。これからJezero craterで探査とサンプルリターンが行われることは,太古の火星環境や生命痕跡の探査の上でも非常に重要であり,このようなコンクリーション研究がその成因解明や起源推定に貢献できるかもしれません。
掲載論文
Yoshida, H.*, Hasegawa, H.*, Katsuta, N., Maruyama, I., Sirono, S., Minami, M., Asahara, Y., Nishimoto, S., Yamaguchi, Y., Ichinnorov, N., Metcalfe, R. (2018) Fe-oxide concretions formed by interacting carbonate and acidic waters on Earth and Mars. Science Advances 2018;4:eaau0872
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